トレーニングに必要な観察のお話

〜「吠えます」だけでは、問題は解決できません〜

「犬が吠えるんです。」
「叱っても吠えるんです。」

この相談、本当によくあります。

もちろん、困っているから相談してくださるのは嬉しいです。

でも、その次に私が

「何が起きた時に吠えましたか?」
「犬はその前にどんな様子でしたか?」
「どんなタイミングで、どのように叱りましたか?」

と聞くと、

「分からないです。」
「覚えていません。」

という返答になることが少なくありません。

実は、この「分からない」「覚えていない」が、訓練が進まない一番の原因になることがあります。

犬のしつけは、訓練士が一生隣について質問し続けるものではありません。

最終的な目標は、飼い主さん自身が

「なぜ吠えたんだろう?」
「何がきっかけだったんだろう?」
「次はこうしてみよう。」

と、自分で考えられるようになることです。

そのためには、「犬が吠えた」という結果だけでは足りません。

①何が起きたのか
②犬はどう反応したのか
③飼い主さんはどう対応したのか
④その結果どうなったのか

これを自分で整理できる力が必要です。

私はよく記録をお願いしています。

しかし、

「○月○日 人に吠えた。叱っても吠えた。」

という内容では、残念ながら原因を分析することはできません。

その人は立ち止まっていたのか歩いていたのか。
犬との距離は近かったのか遠かったのか。
犬は立ち止まっていたのか歩いていたのか。
吠える前に何か変化はあったのか。
叱ったのはすぐだったのか、数秒後だったのか。

こうした情報があって初めて、犬の行動を分析できます。

これは犬の知識があるかどうかではなく、「観察する力」の問題です。

そして、この観察する力は、犬を育てるうえでとても大切な力です。

訓練士は犬を育てるだけでなく、飼い主さんが自分で問題を解決できる力を身につけるお手伝いもしています。

だから私は答えだけをお伝えするのではなく、たくさん質問をします。

その質問の目的は、私が答えを知りたいからではありません。

いつか私がいなくても、飼い主さん自身が同じことを自分に問いかけられるようになるためです。

それが、本当の意味で「犬と向き合える飼い主」への第一歩だと考えています。