犬の訓練は“日常の矛盾”で崩れる

犬の訓練は“日常の矛盾”で崩れる

「吠えるのをやめさせたい」「落ち着いて散歩できるようにしたい」――そう思って訓練に通う飼い主さんは多いものです。けれども、実際にはレッスンで言われたことだけをその場でやって、家に帰ればこれまで通り好きなように接してしまうケースが少なくありません。これでは訓練は成果を出せず、むしろ逆効果になることすらあります。

訓練士は家の中までは見えない

訓練士が指導できるのは限られたレッスンの時間だけです。犬が普段どう過ごし、飼い主がどう接しているかを細部まで把握することはできません。だからこそ、家庭での対応が訓練の方向性と矛盾すれば、そのズレはすぐに犬に伝わり、訓練そのものを無意味にしてしまいます。

吠えを“肯定”していませんか?

分かりやすい例が「吠え」です。

外で他の犬に吠えるのをやめさせたいと口では言いながら、家の中では「まあ他の犬いないし」と窓の外や物音に好きに吠えさせている。これは完全に「吠える行為」を肯定しているのと同じです。

犬には人間のような理性はありません。状況によって「ここでは吠えていい」「ここではダメ」と切り替えることはできないのです。だから、外で止めさせようとどれだけ訓練しても、家で吠え放題にさせれば「吠えたい時に吠える」という習慣が強化されます。

結局、飼い主が犬の行動について何も考えずに過ごしていると、犬は吠える習慣を手放せずに育ってしまうのです。

訓練は共同作業

訓練を無駄にするのは犬ではありません。矛盾した接し方を続けてしまう飼い主自身です。

訓練士が方向性を示すことはできますが、最終的に犬と向き合い、日常の中で一貫した対応を積み重ねるのは飼い主の役割です。その両輪が噛み合ったとき、犬の行動はようやく変わり始めます。

犬を変えたいなら、まず飼い主が変わること。

これを避けている限り、どれだけ訓練を重ねても結果は出ません。